憲法レジュメ:表現の自由【都1B専門記述】

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禁無断転載

憲法令和2年度予想論点

※赤色マーカーについては補足論点。(当日は必要に応じて記載)

表現の自由について論ぜよ。

日本国憲法第21条
第1項
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
第2項
検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

記述すべき論点

(1)意義
自己実現にかかる重要な意味を持つ。(人格の形成に寄与、(ミルトン『アレオパディカ』:思想の自由市場)
自己統治(民主制の過程)に不可欠。

(2)種類(前段と後段)
①集会、結社の自由
多数人が共同の目的のために集合・結合することじたいの自由だけでなく、集合・結合を通じて集団としての意志を形成し、それを外部に表明する自由も含まれる。

②言論、出版の自由
言論=口頭、出版=印刷、と読めるが、これら以外のおよそあらゆる方法・手段によるものを包含すると解される。

(3)ただし、公共の福祉による制約を受ける。(判例に言及しつつ論じるのが良い)

日本国憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

理由:思想・良心の自由と異なり、外部的な行為であるから。
判断基準:二重の基準(経済的自由の規制より厳格な基準で違憲審査する。なぜなら、民主制の過程で是正が不可能となる可能性が有るから。)

(4)判例

北方ジャーナル事件
1.知事選候補者(A氏)を批判する記事を掲載する雑誌が発売予定。
2.A氏は『裁判所』に出版差し止めを申請、同日認められる。
3.出版社が違憲であるとして、国及びA氏に損害賠償請求。
4.最高裁判決→「合憲」
①司法権によるものであり、「検閲」には当たらない。
②「表現の自由」を侵害しているかについては、「国民の名誉保護(憲法13条)」との均衡を考慮して検討が必要。
③本件は
(a)表現内容が真実では無いor公益を図る目的がないことが明白。かつ
(b)被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがある
このような場合には、名誉権保護の観点から事前抑制が例外的に許される。

当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限つて、例外的に事前差止めが許されるものというべきであり、このように解しても上来説示にかかる憲法の趣旨に反するものとはいえない。


徳島市公安条例事件

1.A氏は道路使用許可をとった上でデモ行進を実施
2.しかし、デモ行進の最中に上記使用許可の条件である「交通秩序を維持すること」に違反し、条例違反として起訴された。
3.本件裁判は「道路交通法」よりも「徳島市公安条例」の方が重い刑罰を科している点が争点であったが、最高裁判決として当該条例は「合憲」(憲法94条(条例制定権)に違反しない)とされた。
4.表現の自由については判決の補足意見として多数述べられているため、憲法における表現の自由のテーマで本件が挙げられることが多い。

本条例は、さきにも述べたように、道路交通法等による規制とその目的及び対象において一部共通するものがあるにせよ、これとは別個に、それ自体として独自の目的と意義を有し、それなりにその合理性を肯定することができるものである。もっとも、本条例5条は、3条の規定に違反する集団行進等の主催者、指導者又はせん動者に対して1年以下の懲役若しくは禁錮又は5万円以下の罰金を科するものとしているのであつて、これを道路交通法119条1項13号において同法77条3項により警察署長が付した許可条件に違反した者に対して3月以下の懲役又は3万円以下の罰金を科するものとしているのと対比するときは、同じ道路交通秩序維持のための禁止違反に対する法定刑に相違があり、道路交通法所定の刑種以外の刑又はより重い懲役や罰金の刑をもつて処罰されることとなつているから、この点において本条例は同法に違反するものではないかという疑問が出されるかもしれない。しかしながら、道路交通法の右罰則は、同法七七条所定の規制の実効性を担保するために、一般的に同条の定める道路の特別使用行為等についてどの程度に違反が生ずる可能性があるか、また、その違反が道路交通の安全をどの程度に侵害する危険があるか等を考慮して定められたものであるのに対し、本条例の右罰則は、集団行進等という特殊な性格の行動が帯有するさまざまな地方公共の安寧と秩序の侵害の可能性及び予想される侵害の性質、程度等を総体的に考慮し、殊に道路における交通の安全との関係では、集団行進等が、単に交通の安全を侵害するばかりでなく、場合によつては、地域の平穏を乱すおそれすらあることをも考慮して、その内容を定めたものと考えられる。そうすると、右罰則が法定刑として道路交通法には定めのない禁錮刑をも規定し、また懲役や罰金の刑の上限を同法より重く定めていても、それ自体としては合理性を有するものということができるのである。そして、前述のとおり条例によつて集団行進等について別個の規制を行うことを容認しているものと解される道路交通法が、右条例においてその規制を実効あらしめるための合理的な特別の罰則を定めることを否定する趣旨を含んでいるとは考えられないところであるから、本条例五条の規定が法定刑の点で同法に違反して無効であるとすることはできない。
このように見てくると、本条例3条3号の規定は、確かにその文言が抽象的であるとのそしりを免れないとはいえ、集団行進等における道路交通の秩序遵守についての基準を読みとることが可能であり、犯罪構成要件の内容をなすものとして明確性を欠き憲法31条に違反するものとはいえない。
※上記判決文抜粋は「明確性の理論」にかかるものである。

※憲法31条:罪刑法定主義

泉佐野市民会館事件
1.X委員会が空港建設反対にかかる決起集会を目的として市民会館の使用許可を申請。
2.市長は「公の秩序をみだすおそれが有る場合」等として不許可。
3.最高裁判決:「合憲」
→明白かつ現在の危険の発生が具体的に予見される場合には規制可能。

一 公の施設である市民会館の使用を許可してはならない事由として市立泉佐野市民会館条例(昭和三八年泉佐野市条例第二七号)七条一号の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは、右会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、右会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であり、そう解する限り、このような規制は、憲法二一条地方自治法二四四条に違反しない。
【補足】
(1)表現の自由の前提としての国民の「知る権利」も憲法21条の保障に含まれると解されている。

参考文献

https://ja.wikipedia.org/wiki/表現の自由#:~:text=表現の自由(ひょうげんの,による)自由などを含む。

徳島市公安条例事件 上告審

https://gyosyo.info/最大判昭61-6-11:北方ジャーナル事件/

https://info.yoneyamatalk.biz/判例/憲法判例%E3%80%80泉佐野市民会館事件/

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

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