禁無断転載
出題予想
(1)別添の資料を参考に、働き方が多様化する現代において若年層が意欲的に就労するために必要であると考える課題を200字程度で簡潔に述べよ。
(2)(1)で述べた課題に対して、都はどのような取組を進めるべきか、あなたの考えを述べよ。
資料1 労働経済の分析(令和元年・概要版)【厚生労働省】



資料2 子供・若者の現状と意識に関する調査(平成29年度)【内閣府】






資料3 平成30年若年者雇用実態調査の概況(令和元年12月)【厚生労働省】

解答例
(1)資料1によると、新卒者の就職内定率は高水準である一方で企業においては人手不足感が高まっている。これは、資料3に示されるように若年労働者の自己都合退職率が高いためである。
資料2によると、若者は自分の適性に合わない職場であれば転職を検討する傾向が顕著であり、その際には自らのスキルアップを重視している。
以上のことから、既存の企業において①若者が自身の成長を実感できておらず、②自らの適性とのミスマッチや、③学びを継続できる環境の不足を感じることにより、意欲的な就労が妨げられていると考えられる。(248文字)
(2)そこで、都は以下の取組みを進めていく必要がある。(27文字)
まず第1に、民間企業における適正な職務評価制度の導入を支援する。
現状、日本企業においては年功序列の給与制度を採用しているところが今だに多く、このような制度の下では従業員の職務や業績が適正に評価され、給与へと反映されていないのが実情である。(119文字)
そこで都は、民間企業における適正な業績評価に関する指針を示し、その結果を給与へと反映するように促していく。
具体的には、現在厚生労働省が公表している正社員と非正規雇用労働者の待遇差を解消するための「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」等を参考に、正社員についての業績評価マニュアルを作成するとともに、中小企業等でも導入しやすい業績評価ツールを提供する。
ただし本取組においては、多様な業種・業態がある中で全ての企業において適用できる業績評価手法を示すことは困難であり、国や他の自治体と連携して取組むとともに、業績評価コンサルタントのような専門人材を官民共同で育成する等、多角的な取組みが重要である。(302文字)
上記取組により、就職して間が無い若年層であっても業績が適正に評価され、自らの努力や職場の指導によって成長することで向上した業績が給与へと反映されることにより、自身の成長を実感し、更なる自己研鑽へと意欲的に取り組む企業文化が醸成される。(117文字)
第2に企業・若者の双方が、職場環境や求めるキャリアプランに関する情報を提供・公開する場を提供する。
現状、都においては「若者ジョブマッチング事業」において合同就職面接会を実施したり、ウェブサイト「東京カイシャハッケン伝!」等で会社情報の公開を促しているところであるが、就職する若者側が考えるキャリアプランについては企業側へ伝える機会が少ない状況である。(175文字)
そこで都は、国の行っている「ジョブ・カード制度」と連携し、都内企業に対して若者が職場に求めるものを積極的に伝達することのできる仕組みを構築する。
具体的には、インターネットを活用した登録制のウェブサイトを開設し、若者が自らのキャリアプランを入力・公開できるようにする。企業側についても登録制とし、若者は自らの入力情報を特定の企業のみに限定して公開することも可能とする。
若者の入力情報については、国の「ジョブ・カード制度」と連携した上で、入力しやすく、かつ、新たな項目の追加にも対応することで、自らの考えを適切に公開できるような工夫を行う。
さらに、公開された情報に対しては、企業側からもコメントできる機能を付与することで、職場環境や企業文化等を伝達できるようにする。(331文字)
上記取組により企業と若者が、面接等の短い時間では無く、長い時間をかけて交流した上で就職へと繋がっていくため、ミスマッチを減少させることができる。
また、付随する利点として、企業側は若者の提供する情報を活用し、IT技術による生活様式の変化が激しい現代において、職場環境や事業内容に改善を加えることも可能であり、東京都全体としての生産性向上にも繋がると考えられる。(179文字)
第3に、民間企業間での人材交流を促進する制度を導入する。
一部の大企業を除き、一民間企業において経験できる職務というのは限定的にならざるを得ない。一方で、資料1(26頁)や資料2(8)に示されているように、現代の若者は職業人生を長く捉えており、生涯を通じた学びの継続を重視している事が分かる。
これは都の持続的な発展を考える上でも望ましい考え方であり、積極的に後押ししていくべきである。(191文字)
具体的には、自己の職務経験を広げたいと考える若者の相談窓口を設置し、その若者が経験したいと考える職務を行なっている企業とのマッチングを行う。
マッチングは、最終的には若者が現在在籍する企業の了解を得た上で行う必要があるが、その際にも個人名を伏せるなど相談内容の秘密は厳守すべきである。
本取組は、一企業の従業員の転職活動に手を貸すことになりかねないため、民間企業と十分に連携を取り、紹介先企業についても登録制にした上で、秘密保持契約の締結等まで含めた専門的なコンサルティングが求められる。
その為、現在人材派遣や転職支援をおこなっている民間企業とも連携し、若者・現在の企業・紹介先企業全てにとってメリットがあるように制度を設計する必要がある。(318文字)
上記取組を実施することで、退職や転職といったリスクの無い、幅広い職務経験を若者に提供することが可能となり、安定的な学びの継続が可能となる。
また、企業にとっても従業員の成長が期待できるだけでなく、マッチング先となった企業との関係が生まれることにより、企業同士での共同事業を行う等のシナジーが期待できる。(150文字)
東京都においては、日々新しい働き方が生まれていく中で、時代の変化に対応しつつ、民間企業の生産性向上を支援していく必要がある。
そのためには、若年層が意欲的に就労していくことが必要不可欠である。
上記3つの取組の実施により、若者と企業のミスマッチを軽減し、生涯を通じた学びの継続とそれに伴う成長の実感を得ることができ、意欲を持って仕事を行うことのできる環境が構築される。
都が国際社会の中で世界をリードして行くためには、若い世代の感性、力が重要であり、政府や企業が積極的に若年層を支援していく必要がある。(248文字)
備考・引用文献
備考
(1)全2405文字、個々人でアレンジがしやすいように多めに書きました。本試験では1500字、多くても1600字以内におさめて下さい。アレンジが難しければ課題と取組を2つにすれば丁度くらいになると思われます。(第1ブロック538文字、第2ブロック685文字、第3ブロック659文字)
(2)問題文中の資料についても、当日の問われ方が分からないので多めに掲載しています。使われそうなものをピックアップして全て掲載していますので、解答例で使用していない資料も多数ありますが、基本的に本試験では全ての資料に言及するようにしてください。(文字数的に難しければ一言添えるだけでもOK)
(3)解説は以下のサイトのマッハ講座36・37にて行なっています。
「元公務員による公務員試験マッハ講座」
https://www.youtube.com/channel/UC91-I-Mv5kqzsPp-EtCLjDw
引用文献
資料引用元
資料1 労働経済の分析(令和元年・概要版)【厚生労働省】
資料2 子供・若者の現状と意識に関する調査(平成29年度)【内閣府】
資料3 平成30年若年者雇用実態調査の概況(令和元年12月)【厚生労働省】
解答例の政策


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