例題
行政計画について説明せよ。
参考答案
行政計画とは、行政主体が行政活動について定める計画の総称をいう。具体例としては、土地区画整理事業計画や再開発事業計画などがある。
行政計画の機能としては、①関係行政機関に、統一的な指針を提供することで、行政活動の合理性・整合性を確保することに加え、②一定の行政目的および計画に基づく行政活動を予告することで、国民を行政目的の達成に向け、指導・誘導するガイドラインとしての役割も挙げられる。
行政計画は、対象地域、内容、期間、法律の根拠の有無など、様々な視点から分類が可能である。
例えば、私人に対して法的拘束力を有するか否かにより、拘束的計画と非拘束的計画に分けられる。都市計画、土地区画整理事業計画は、それが策定・公告されると、当該計画区域内の土地利用が一定の範囲で制限されるので、拘束的計画である。
このように、行政計画の中には、私人の権利自由を制限するものもあることから、法律による行政の原理との関係が問題となる。
この点、拘束的計画のように、計画が私人の行為を規制するような外部的効果を有する場合には、法律の根拠が必要である。これに対し行政内外に対して指針的な意味にとどまり、法的拘束力を有しない非拘束的計画については、法律の根拠は不要とされる。
また、行政計画には多種多様なものがあり、その内容をあらかじめ法律で覊束することは困難であるので、行政手続法は、行政計画について規定を置いていない。
それでは、行政計画により私人の権利利益に侵害が生じた場合の事後的救済はどうか。
まず、違法な行政計画に対する抗告訴訟の提起は認められるか。行政計画が行政庁の「処分」(行政事件訴訟法3条2項)にあたるかが問題となる。
「処分」とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為により、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められるものをいう(判例に同旨)。これは、講学上の行政行為とほぼ同義であり、行政計画の大部分は、行政目的達成のための指針の表明にすぎないから、行政計画の処分性は原則として否定される。もっとも、法的拘束力のある具体的内容をもつ計画については、例外的に司法審査の場が与えられることが望ましい。
この点、判例は、法的効果をもつ行政計画についても、例えば、都市計画法に基づく用途地域指定について、当該指定による制約は法令が制定された場合と同様な一般的抽象的なものにすぎないとして、その処分性を否定している(いわゆる法令制定論)。
もっとも、近年は、関係人の救済という点を配慮して、処分性の有無を個別に決する傾向にある。都市再開発計画法に基づく第2種市街地再開発事業計画については、再開発ビルの建設が、地域内住民の土地買収・収容を伴う作用であることから、その処分性を肯定した。
また、かつては法的拘束力のある土地区画整理事業計画についても、公共事業の青写真にすぎないものとして、その処分性を否定してきた(高円寺青写真判決)が、換地処分を伴う土地区画整理事業につき、施工地区内の住民には、その法的地位に直接的な影響が生ずるとして、処分性を肯定するに至った。
次に、行政計画が事情の変化により変更・中止された場合、それによって損害を被った私人が、国家賠償請求訴訟を提起しうるかが問題となる。
この点、行政計画は将来を予測して目標を設定するから、ある程度、計画の変更や中止はやむを得ない。
しかし、行政計画の変更・中止により、その計画を信頼した私人が不測の損害を被った場合、これを放置することは信義誠実の原則に反し妥当でない。
従って、行政庁が、私人に対し損害を補償するなどの代償措置を講ずることなく計画を変更することは、やむを得ない客観的事情がない限り、私人との信頼関係を破壊するものであるとして違法であるといえ、国家賠償請求を認めるべきと考える(判例に同旨)。
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