連立政権の安定性について説明しなさい。
解答例
連立政権とは、2つもしくはそれ以上の政党が政策合意を基礎に権力をつかさどる政権をいうものとする。
これまで、連立政権は不安定であり単独政権こそ安定的であるとの考えが浸透していたが、実証研究に基づき、必然的に政府が弱体な訳ではないことが判明している。
わが国が採用する議院内閣制においても、政権の安定性という観点から、自民党単独政権のように、単独政権が優れていると考えられてきたが、わが国において連立政権が常態化するようになって久しく、その安定性に関する評価を断ずるには時期尚早の間が否めないが、以下、連立政権はどのような状況下でどのような連立であれば安定するのかを論ずる。
連立政権の安定性を左右する要件の1つとして政党制の種類が挙げられる。連立政権はその性質上多党制の国で成立する。その国の政党制がサルトーリのいう穏健な多党制である場合には、政党間のイデオロギー距離が近く、連立政権を構成しても求心力が生じ、政権が安定しやすいとされる。逆に極端な多党制の場合は左右両翼の勢力が大きく、連立政権を構成すれば遠心力が生じて政権が不安定となると考えられる。
さらに連立政権の形態という要因も挙げることができる。連立政権は、連立が形成される規模によって、議会における50%+1議席を確保するうえで余分な党を含んでいる「過大規模連立政権」、50%+1議席を確保するうえで必要な党を含んでいない「過小規模連立政権」、50%+1議席を確保するうえで必要な最小限の党を含んでいる「最小勝利連立政権」の3つに分類することができる。
これらのうち、「過大規模連立政権」は規模の大きさのため、勝利にともなう資源の配分が不十分となり政権内で不満が生じるため、安定性を欠く。また「過小規模連立政権」は議会の過半数を占めていないため、政権の安定性は著しく低くなる。これらに比べ「最小勝利連立政権」は勝利にともなう資源配分をめぐる不満が生じにくく、政権の安定性が高いと考えられる。このように連立政権の安定性は一概に論ずることはできず、その政権が置かれた状況、その連立政権の形態などの諸条件によって異なると考えられる。
わが国における例として、1993年に誕生した細川内閣、すなわち非自民連立政権を挙げることができる。この連立政権は50%+1議席を確保するうえで余分な党を含む過大規模連立政権であり、しかも外交政策上、財政政策上の政党間の距離が大きかったため、不安定にならざるを得ない政権であった。事実、連立政権を構成した政党間でコンセンサスが取れていた政治改革が実現したのちに政権は崩壊した。これは、上記のような連立政権のモデルの一例となっていると考えることができよう。
【補足】
・択一試験の勉強がある程度進んだ受験生を想定し、個々の論点の詳細な説明は割愛させていただきます。
・文字数については、受験先に合わせて適宜調整してください。(並列して論ずる内容については文字数の分量を同程度にすること)
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