テイラーの科学的管理法について、その背景と内容を説明せよ。
解答例
科学的管理法とは、20世紀初頭にテイラーが提唱した経営管理の方法で、客観的・科学的な基準に基づいて賃金や仕事量を決定し、業務を管理する手法である。
テイラーが登場する以前の19世紀末の米英では、成行管理と単純出来高給制による経営手法がとられていたが、単純出来高給制の下では、出来高=生産量が増えると人件費が高騰するため、経営者は人件費を抑えるために賃金率を引き下げていた。そのため、工員が申し合わせて作業を怠ける「組織的怠業」を起こしていた。
このような状況の下、テイラーは、怠業を自然的怠業と組織的怠業とに分類し、本能的な観点に基づく自然的怠業ではなく、組織的怠業の除去を目標とする科学的管理法を提唱した。
テイラーが提唱した科学的管理法では、まず、一流・熟練労働者の動作を観察し、作業を基本動作に分解し、無駄な動作を省略して必要な基本動作を決定する動作研究と、決定した基本動作の作業時間を測定する時間研究により、客観的・科学的に課業が設定された。
次に、給与体系を課業の達成度合いに基づいた差別的出来高給制度を採用し、課業を時間通りに正しくやり終えた工員には、割増賃金率を適用することとした。これにより、工員は精力的に作業を行うインセンティブを得、工場の生産効率は高まった。
さらに、職能別職長制を採用し、専門職長による分業体制を確立した。
このような科学的管理法の概念は、多くの産業の生産現場に導入され、特にフォード社がベルトコンベアを用いた移動組立ラインを導入した自動車産業では顕著な成果を挙げた。
しかし、科学的管理法は、給与を唯一の仕事の動機付けと捉えたため、人間性や労使関係を考慮しきれていないという批判もなされた。こうした批判から、対人関係に着目した人間関係論が登場することになった。
【補足】
・択一試験の勉強がある程度進んだ受験生を想定し、個々の論点の詳細な説明は割愛させていただきます。
・文字数については、受験先に合わせて適宜調整してください。(並列して論ずる内容については文字数の分量を同程度にすること)
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